32F
主訴:悪心・嘔吐
嘔吐の原因で鑑別してみる
嘔吐中枢の直接刺激
内蔵・腹膜の刺激による反射性嘔吐
- 食中毒、虫垂炎、嘔吐下痢症(ロタ)、GI潰瘍、GERD、腹膜炎、GI穿孔、糸球体腎炎、尿路結石
化学受容体の刺激
消化管の狭窄・通過障害
心因性の嘔吐
問診
O:はき気は昨日から
P:なし
Q:
R:
S:飲食物が飲み込めない
T:持続性
etc:5日前から頻尿・排尿時痛、2日前から背部痛(右)
便正常
PH、FH、服用歴、渡航歴特になし
タバコ、酒なし
飲食物:クランベリージュースを水分補給
妊娠について:なし
性活動度特になし
38.9の熱、悪寒(ひどい)→嘔吐
めまい、脱力感
身体所見
vital:BT38.9 BP仰臥位95/62 立位75/40 RR24 HR仰臥位120 立位145
触診:右肋骨脊椎角圧痛、腹部軟
髄膜刺激症状なし
腹膜刺激症状なし
この時点で、SIRSを疑う
SIRSの診断基準
- 体温 < 36℃ or 38℃
- 脈拍 > 90/min
- 呼吸数 >20/min (or PaCO2<32mmHg)
- 白血球 >12000/mm³ or <4000/mm³ (or 10%以上の幼若球出現)
身体所見から既に赤字項目が合致。
なぜSIRSになっているか→尿路感染を疑う
検査所見
尿沈渣:HPFでWBC 20個
血液所見
pH7.29 PaCO2 30 PaO2 90 Na 138 K 5.4 HCO3- 14 Cl102 WBC18500 BUN 30 Crr 1.2 BG 90
代謝性アシドーシス(↓)を起こしている。
代償の評価を行う。
代償は経験則的に次の数値で補正する。
代謝性アシドーシス :1.2
呼吸性アシドーシス急性 :0.1
慢性 :0.35
代謝性アルカローシス :0.7
呼吸性アルカローシス急性:0.2
慢性:0.4
補正=
=1.2
=1.2*10=12
=30 なので代償はされている。
次に、アニオンギャップを計算する。
22
正常AGは8~12くらい。
AG上昇を起こす病態は、乳酸アシドーシス、ケトアシドーシス、腎不全、薬物(メチルアルコール、エチレングリコール、NSAIDs)など。
なので、代謝性アシドーシスだろう。
(AGが正常なら下痢、RTAを疑う。)
尿培養からE.coliが検出され、敗血症を伴った腎盂腎炎と診断された。
NOTES
酸塩基平衡異常による病態。
アシドーシス:発熱、敗血症
アルカローシス:嘔吐による酸喪失
菌血症について
発熱は普通ある。しかし、発熱がないときは致死率上昇。
悪寒:震える悪寒は菌血症に対して感度は低いが特異度は高い。
WBCの多さは感度低い。
発熱を伴う排尿障害について
男:急性前立腺炎(E.coliなどG-桿菌)。DM、前立腺肥大症などの基礎疾患。
女:急性腎盂腎炎(E.coli多い)。嘔吐。性的活動期。
酸塩基異常のアプローチ
- acidemiaかalkaremiaか(pH=7.35)
- 代謝性か呼吸性か
- 代償機構を決定
- 原因を確定
- 治療
症例1
27M。数年来のIDDMでインスリン治療。2日前より食事がとれず、インスリン不使用。昏睡手前。
Na 140 Cl105 K 7.0 HCO3- 6 pH 7.0 PCO2 20 BG 800
pH=7.0より、acidemia
=6より、代謝性アシドーシス
=24-6=18
=1.2*18=21.6
代償=40-21.6=18.4
これと今の=20と比較すると、代償は起きている。
AG=140-(105+6)=29↑
補正=+=(29-12)+6=23
これと正常=24を比較すると、代償は起きている。
よって、病態はsimple metabolic acidosis with elevated AG
AGがあがるのは、DKA。
よって、インスリン補充、脱水改善および、インスリン作用によるK消費の補充を行う。
症例2
31M。てんかん既往。てんかん大発作を起こした。
pH 7.14 PCO2 45 Na 140 K 4.0 Cl98 HCO3- 17
pH=7.14より、acidemia
=17より、代謝性アシドーシス
=24-17=7
=1.2*7=8.4
代償=40-8.4=31.6
これと今の=45と比較すると、呼吸性アシドーシスになっている。
AG=140-(98+17)=25↑
補正=+=(25-12)+17=30
これと正常=24を比較すると、代謝性アルカローシスになっている。
よって、病態はmetabolic acidosis with elevated AG, metabolic alkalosis and respiratory acidosis
てんかん大発作により酸素不足。嫌気性解糖により乳酸アシドーシス。
原因治療を行う。
症例3
35F。昏睡。
pH 6.88 PCO2 40 HCO3 7 Na 135 K 1.5 Cl118
BP 110/70 HR 70 diarrhea(-) Abd ope(-) drug(-) BUN 16 Cr 1.0 urine pH 6.2
pH=6.88より、acidemia
=7より、代謝性アシドーシス
=24-7=17
=1.2*17=20.4
代償=40-20.4=19.6
これと今の=40と比較すると、呼吸性アシドーシスになっている。
AG=135-(118+7)=10でAGは正常
よって、病態はmetabolic acidosis with normal AG and respiratory acidosis
AGが正常なアシドーシスは、下痢かRTAを疑うが、下痢は否定されているので、RTA。
尿pHが6.2と、5.3を超えているため、I型のRTA。
治療としては、を補充すると低カリウム血症が増悪するので、低カリウム血症の治療を優先する。
RTAの鑑別
バックナンバー
20110531全身倦怠感
20110608鼻血
20110615呼吸困難
20110622体重減少
20110628頭痛
20110706腹痛