19F
主訴 腹痛を訴え救急車で搬送された
腹痛はここ(20110706)でいうように、腹部領域別に挙げるのが主流らしいが、上半期の講義内容をふまえ、臓器別に鑑別診断を挙げてみることにしよう。
消化器疾患
泌尿器疾患
- 腎盂腎炎
- 尿管結石
- 膀胱炎
- 破裂・損傷
循環器系疾患
産婦人科系疾患
その他
- 骨折
- 感染
- 心因性
問診
O:10時間前から
P:徐々に悪化。動くと痛い。
Q:dull鈍くて crampy痙攣性で aching痛い
R:下腹部両側性に進展
S:痛みが10段階で言うところの4から7に進行
T:ずっと痛い
追加で問いただすと
2日前に彼氏と性行為。
1ヶ月前から、緑がかったおりものと排尿時痛を自覚。
昨年、彼氏が3人いた。現在は1人。
性行為時に避妊を行わず。
彼氏もこの1ヶ月排尿時痛を自覚。
熱、悪寒。はきけ。
黄緑、悪臭のある帯下。
尿回数増加。排尿痛。
不正出血。性行為後出血。性行為時痛。
婦人科関連感染症が非常に疑わしくなってきた。
身体診察
Height 170 BW 48
BP 120/90 HR 96 RR 32 BT 39.1(SIRSになっている)
Rebound tenderness(+)
Muscular deffense (±)
Adnexal pain(+), mass(-), blood(-)
pelvic: discharge(+), bleeding(+)
Vaginal exam: pain(+)
検査
RBC 400 WBC 12000 Hb 14.5 Hct 41.6 Plt 22.3
TP 6.8 Alb 4.2 T-Bil 0.7 AST 15 ALT 8 LDH 182
γ-GTP 24 Amy 65 CRP 28 ESR 20
炎症がおきているようだ。
Urinalysis: WBC(+)
Urine culture: N.gonorrheae(+)
US: inflammation
PCR: N.gonorrheae(+), C. tracomatis(-)
という訳で、淋菌に起因するPIDという診断がついた。
PIDとFits-Hugh-Curtis syndromeについて。
STD/STIについてはいろいろなサイトがあるので、簡単にまとめたものを記す。
N. gonorrheae(グラム陰性双球菌)
- M:粘液性分泌物、赤くはれる、排尿・勃起時痛
- F:黄緑色帯下・悪臭、排尿時痛
- 数時間~数日の潜伏期間
- 治療:PCG
C. tracomatis
HHV II
- 痛痒、灼熱感、水泡、潰瘍、神経痛
- 女性では排尿時痛
- 4~10日の潜伏期間。強い感染力。
- 治療:抗ウィルス薬
HPV6/11
- M:亀頭周囲に米粒大の腫瘤
- F:外陰部、膣周辺に米粒大の腫瘤
- どちらも痛みや掻痒感はない。
- 数ヶ月~1年の潜伏期間
- 治療:レーザー切除
T. Pallidum
- 潜伏期~3 weeks
- 第1期~3 months:初期硬結、硬性下疳、LN腫脹
- 第2期~3 years:ばら疹、扁平コンジローマ
- 第3期~10years:結節性梅毒疹、ゴム腫
- 第4期:神経梅毒(進行麻痺、脊髄癆)、大動脈炎、大動脈瘤
- 治療はPCG
Candida
- M:性器掻痒感、ただれる
- F:白いヨーグルト状、黄色いカス状、チーズ状のポロポロしたおりもの
- 潜伏期間は様々
- 治療:抗真菌薬
T. vaginalis
- M:性器掻痒感、灼熱感、排尿時痛
- F:黄緑色、乳白色の水っぽいおりもの。悪臭、泡立つ。
- 2週間の潜伏期間
- 治療:抗原虫薬
- 感染後1~2週間で感冒様症状
- 検査陽性は6~8週間
- AIDS発症まで約10年
- 治療:HAART
- 症状が出ずに回復することが多い
- 倦怠感、筋肉痛、発熱、嘔吐、茶褐色尿、白色便、腹部膨満感、黄疸
- 6週~6ヶ月の潜伏期間
- 治療:ラミブジン、インターフェロン
婦人科産科関連疾患は診るのが難しい。
そもそも、女性器というものは難しい。
酒・タバコ・性はみんな隠したがる(特にMSM)。問診の取り方に注意。
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