44歳、女性
主訴:全身倦怠感
2週間前より全身倦怠感、食欲低下を認め、1週間前から尿量低下を自覚していた。
近医を受診したところ、腎機能低下を指摘され、当院緊急外来を紹介受診した。
症候学を勉強するにあたって、現場に基づいて
- 鑑別診断を挙げる
- 問診・病歴聴取を行う
- 身体診察を行い、所見をとる
- 必要な生化学・画像検査をオーダーする
- 上記の情報をもとに鑑別診断を絞る
- 診断を確定する
という流れでやろう。
鑑別診断の挙げ方として
V:Vascular (血管性)
I:Infection (感染症)
N:Neoplasm (良性・悪性新生物)
D:Degeneration (変性疾患)
I:Intoxication / Iatrogenic (薬物・毒物中毒、医原性)
C:Congenital (先天性疾患)
A:Autoimmunity / Allergy (自己免疫疾患)
T:Trauma (外傷)
E:Endocrine (内分泌疾患)
と分類すれば、一通り網羅できる。
V:ウェゲナー肉芽腫、RPGN、MPA、AGA、SLE、HELLP症候群、HUS、TTP、DIC、強皮腎症、悪性高血圧
I:HCV、EBV、HIV、マラリア、リケッチア、レプトスピラ、ウィルス性出血熱、感染性心内膜炎、結核
N:再生不良性貧血、腫瘍、リンパ腫
D:?
I:薬剤性
C:サラセミア、遺伝性球状赤血球症
A:ITP、AIHA、Evans症候群、寒冷凝集素症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症、SLE、MG
T:?
E:腎不全、副腎機能、甲状腺機能、副甲状腺機能、脱水、更年期障害
問診は、次のように聞けば一通り網羅できる。
O:Onset(発症様式)
P:Provocation(寛解・増悪因子)
Q:Quality(症状の性状)
R:Region/Radiation(部位・放散)
S:Severity(重症度)
T:Timing(時間経過)
etc:Association(その他)
O:2週間前全身倦怠感/1週間前尿量低下
以外特記事項なし。
既往歴、家族歴、生活習慣(飲酒、喫煙、性活動度)、服用薬、アレルギー、渡航歴、職業など必要に応じて聞く。
既往歴:パニック障害(24〜)、帯状疱疹(40)、子宮筋腫・子宮内膜症(41)手術施行。3年前の健康診断で異常なし。
家族歴:原因不明の透析2人
服用薬:1か月前に漢方薬を1週間
アレルギー:ピリン系薬剤
渡航歴:3か月前上海
身体所見
下肢紫斑、軽度浮腫、収縮期雑音
血圧164/104
その他特に異常なし。
検査所見
WBC 7500、RBC 218、Hb 6.5、MCV 86.1、Plt 6.1、BUN 59.7、Cr 5.55、TP 5.9、Alb 3.3、T-bil 3.2、D-bil 0.5、AST 53、ALT19、ALP 110、g-GTP 10、DH 1606L、CK 104、Na 140、K 3.5、Cl 109、CRP 0.16、PT-INR 0.85、APTT 25.7、D-dimer 2.5
尿タンパク3+、潜血3+、胸部X線写真異常なし、心電図異常なし。
腎不全、溶血性貧血、血小板減少から、HUSが疑わしい。
TTPとの鑑別のため、ADAMTS13活性および阻害、造血障害か血球破壊かの鑑別のため網状赤血球を、AIHAの鑑別のためCoombs testを追加した。
HUSは多くが小児、それも大腸菌によるvero毒素で発症するものが多いが、成人でも発症する非典型例の家族性/特発性HUSがある。