2.6 人工腎臓器の透析モデル

図のような装置を考える。

血液中のゴミが透析液に移行する除去率が、流速にどう依存するかだけを考える。
右向きを正として、老廃物の血液中濃度u、透析液中の濃度vは、xの関数として
u=u(x)
v=v(x)
と仮定する。
透析膜を通過する老廃物の総量は、フィックの法則に基づくとして、

単位時間に単位面積の膜を通過する物質の総量は、膜のその位置における濃度差に依存する

と考える。
透析膜を分ける濃度差はu(x)-v(x)
長さ\Delta xの透析膜の部分を通って移行する老廃物の量はk\{ u(x)-v(x)\} \Delta x…(1)
さて、血液中にある老廃物の行く末は
(入り口を通る量)=(透析膜を通過する量)+(出口を通る量)
であるから、機械を通る量をQ_Bとすると
Q_B u(x)=k\{ u(x)-v(x)\} \Delta x+Q_Bu(x+\Delta x)
Q_B\frac{u(x+\Delta x)-u(x)}{\Delta x}=-k\{ u(x)-v(x)\}
\Delta x \to 0とすると
Q_B\frac{du}{dx}=-k(u-v)…(2)
逆に、透析液でも考えると
-Q_D\frac{du}{dx}=-k(u-v)
2式は一対のモデル支配方程式というらしい。加えると
\frac{du}{dx}-\frac{dv}{dx}=-\frac{k}{Q_B}(u-v)+\frac{k}{Q_D}(u-v)
z=u-v(透析液からみた相対速度になる)、\alpha =\frac{k}{Q_B}-\frac{k}{Q_D}とおけば
\frac{dz}{dx}=-\alpha z
z=Ae^{\alpha x}
ここで、(2)に戻ると
\frac{du}{dx}=-\frac{k}{Q_B}(u-v)=-\frac{k}{Q_B}z=-\frac{k}{Q_B}Ae^{-\alpha x}
積分して
u(x)=B+\frac{kA}{\alpha Q_B}e^{-\alpha x}
z=u-vに戻れば
v(x)=B+\frac{kA}{\alpha Q_D}e^{-\alpha x}
 
解を完全なものにするには、境界条件をはっきりさせないといけないらしい。
u(0)=u_0
v(L)=0(Lは透析器の長さ)
とすると、AとBが決まる。最終解は
\begin{align}u(x)&=u_0\{ \frac{\frac{e^{\alpha L}}{Q_D}-\frac{e^{-\alpha x}}{Q_B}}{\frac{e^{-\alpha L}}{Q_D}-\frac{1}{Q_B}}\}\\v(x)&=\frac{u_0}{Q_D}\{ \frac{e^{\alpha L}-e^{-\alpha x}}{\frac{e^{-\alpha L}}{Q_D}-\frac{1}{Q_D}}\}\end{align}…(3)
 
ここで、医学的に気になる量は、除去される老廃物の量である。
これは(1)を積分して
\begin{align}\int_0^{\hspace{25}L} k\{ u(x)-v(x)\}dx &=\int_0^{\hspace{25}L}-Q_B\frac{du}{dx}dx\\&=-Q_B\int_{\hspace{10}u_0}^{\hspace{35}u_L} du\\&=Q_B\{ u_0-u(L)\}\end{align}
 
人工腎臓器のを作る人は、クリアランスをいかに効率良く出来るかが気になる。
入ってきた濃度u_0に対して、除去できた総量を考えると
C=\frac{Q_B\{ u_0-u(L)\}}{u_0}
(3)を用いて整理し、\alpha L=\frac{kL}{Q_B}(1-\frac{Q_B}{Q_D})と書き換えると
C=Q_B \frac{1-e^{-\alpha L}}{1-\frac{Q_B}{Q_D}e^{-\alpha L}}
 
Q_BQ_Dはそれぞれ、血管、透析器に流入する量であることを思い出せば、このモデルでクリアランスを変化させるパラメータは
血管と透析器の流量比\frac{Q_B}{Q_D}
血管の流入量に対する透析器の長さ\frac{kL}{Q_B}
となる。