薬剤の相加効果と相乗効果

MikuHatsune2012-02-02

1種類の薬剤を加えて、用量反応曲線を描いてきた。
世界的には2剤以上併用して、相乗効果があるかどうかを調べたい人がいるらしい。
 
臨床的には、例えば、悪性リンパ腫治療としてのRCHOP治療など、作用機序が異なる薬剤を少量ずつ使用することで、副作用を軽減しつつ抗腫瘍効果を高めよう、という多剤併用療法があるが、相乗効果では、作用機序が(ほぼ)同一(だが、細胞作用が異なるよう)な薬剤をちょびっとずつ使ったら、各々の薬剤の効果をただ足しあわせたものよりも、ものすごい効果が生まれるのではないか、ということを期待している(と思う)。
 
相乗効果を統計的に出したい、と思った人はいるようで、おなじみの有料ソフトPrismさんで検索すると

Does Prism do median-effect analysis for evaluating drug synergy?
 
No.

と言っているわりに、こちらでは

How can I figure out if two drugs are additive or synergistic?
 
……長文……

と言っている。median-effect analysisとは何かがよくわからないので、後者の方法をシミュレーションしてみる。
 
用量反応曲線の形は、簡単に
f(x)=\frac{1}{1+e^{-nx}}
で、濃度xに対して死亡している細胞の割合が返ってくることにする。
薬剤AとBが、独立に作用する、つまり、AとBを加えたら、各々の死亡率を足しあわせた、相加効果しか得られない、ということを帰無仮説H_0とし、これを棄却することで、AとBは相加効果以上の相乗効果がある、という対立仮説H_1を検定することにする。
薬剤A、Bによる曲線は、それぞれ
f_A(x)=\frac{1}{1+e^{-n_Ax}}
f_B(x)=\frac{1}{1+e^{-n_Bx}}
で与えられるものとする。
AとBが独立に作用する、ということは、Aでまず細胞を殺し、その後、残った細胞をBで殺すことに相当するから、A(濃度x)とB(濃度y)を併用することによる死亡f_{AB}(x,\hspace{3}y)
\begin{align}f_{AB}(x,\hspace{3}y)&=f_A(x)+(1-f_B(y))f_A(x)\\&=f_A(x)+f_B(y)-f_A(x)f_B(y)\end{align}
という3次元曲面が得られる。

#適当にHill係数をおく。
n1 <- 7
n2 <- 12

#適当な曲線。
f1 <- function(x1){
	1/(1 + exp(-n1*x1))
}
f2 <- function(x2){
	1/(1 + exp(-n2*x2))
}
#独立モデル。
fz <- function(x,y){
	f1(x) + f2(y) - f1(x)*f2(y)
}

library(rgl)
x <- seq(-1, 1, length=100)
y <- x
#3次元プロット用にz点を作成する。
z <- 100 - outer(x, y, fz) * 100 #100%に変換しておく。
col.slice <- 15 #死亡率ごとに色付けするための、濃度段階の設定。
persp3d(x, y, z, col=rainbow(col.slice)[z/(max(z)) * col.slice + 1], xlab="A conc", ylab="B conc", zlab="viability [%]")
#rgl.snapshot("synergy.png") #3次元プロットを写真に撮れるらしい。


CombiToolという何か(pdf)。まだ読んでいない。
 
薬理学総論というこちらのページによると、synergyは相乗効果ではないらしい…
ライフサイエンス辞書だとsynergy=相乗効果(potentiation)らしいが…