重症患者管理マニュアル

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COI:なし。自費で購入。

重症患者管理マニュアル

重症患者管理マニュアル

  • 作者: 平岡栄治,則末泰博,藤谷茂樹
  • 出版社/メーカー: メディカルサイエンスインターナショナル
  • 発売日: 2018/08/02
  • メディア: 単行本
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割と最近に出版されており、ガイドラインやRCTなのは最新と思われるものにそって記述されている。
この本が面白そうだと思ったのが、前書きの

セントルイス大学で集中治療のトレーニングを受けていたとき,私は大きく分けて2つのタイプの指導医がいると感じていた。米国なのでどちらのタイプもガイドラインを重視している点では変わりないが,ガイドラインでは取り扱われていないテーマや,ガイドラインだけでは対応できない複雑な症例への思考過程が大きく異なっていた。
1つ目のタイプは,ベッドサイド回診の際に,自分の判断のよりどころとして, 記憶しているさまざまな無作為化比較試験(RCT)のデザインと結果を次から次へと話す指導医である。これは30歳代までの若い集中治療医に多く, 「この指導医はすごい」と研修医やフェロー達は目を輝かせながら話を聞いていた。 もう1つのタイプは,RCTのことはあまり話題にせず(もちろん文献を読んではいたと思うが……),生理学的な思考過程で判断をしていくタイプの指導医であり,40歳代以上の指導医に多かった。このタイプの集中治療医は,同じ病名がついていても患者によって異なる治療内容になることが多く,同じレベルの生理学的知識をもっていない者にとっては,その判断の根拠がわかりにくい。大半の研修医やフェロー達は,「あの指導医は古いからエビデンスに基づいていない」などと陰口を言っていた。しかし私にとっては,後者の「生理学重視」の集中治療医との回診のほうがはるかに楽しく,その決断の多くは理にかなっていると感じた。実際,2年前には正しいと思われていた「エビデンス」が大きく変わり,生理学重視の年配の集中治療医が言っていたことのほうが正しかったと認識することを多く経験した。
例えば,私がフェロー1年目であった2009年に,Dr. Kaplanという年配の集中治療医から,「静脈が拡張した敗血症性ショックの患者に10Lも15Lも輸液したところでunstressed volumeとしてプールされるだけだから,CVPがどうであろうと2~3L輸液して,血圧が安定しなければさっさと昇圧薬を使って,無駄に輸液をしないようにしなさい」と叱られたことがあるが,これも深い生理学的知識に裏打ちされた指導であったと思う。
もちろんエビデンスの重要性は説明するまでもないが,患者を個別化して治療を行うためには,多様な患者をまとめたRCTなどからなるエビデンスと生理学のバランスが必要である。本書はまさにその最適なバランスを追求したマ ニュアルである。まず,生理学を知り,そして「国際ガイドラインと日本のガイドラインではどうなっているか?」を確認し,さらに「過去と最近のRCTはどうか?」を知るという,ICUで決断するために不可欠な3つの要素が盛り込まれている。本書が“エビデンス"と生理学のバランスのとれた集中治療の学習と実践の一助になれば幸いである。
則末泰博(東京ベイ・浦安市川医療センター 呼吸器内科/救急集中治療科)

というところの、

記憶しているさまざまな無作為化比較試験(RCT)のデザインと結果を次から次へと話す指導医

生理学的な思考過程で判断をしていくタイプの指導医

というところで、近年の集中治療医()は特に前者のRCTマンセー志向が強いが、かといって集中治療分野のRCTは結局、primary outcome の死亡率は統計学的有意性はなかったがsecondary で…みたいなしょうもないのが多いのでなんだかなぁ、という感じで見てる。
この本はどちらかというと後者よりの、生理学メインで病態を考えようとはするものの、RCTやガイドラインを列挙しつつ、でも、「実際に目の前の重症患者にどれくらいの量で薬を使うか」というようなアンチョコ本に期待するようなことは、書いてあったり書いてなかったりする。筆者らの所属施設のこと、例えば心臓血管外科手術後の術後経過なんかはいい参考になるが、結局は他のアンチョコ本も見ないといけない感じ。Intensivist のほうがたぶんアンチョコ的に使える、はず。

生理学的に病態を考えるなら、有名なICU book (自分が読んだのは3版)があるが、これは本当に生理学しか書いてないので、アンチョコ的な役割はまったくない。

ICUブック 第4版

ICUブック 第4版