医療費が低い都道府県では、心肺停止(CPA)してから生き残る確率が低いらしい。
BMJ Open 2015;5:e008374
著者の解説
という話を知り合いから仕入れたら、その知り合いは筆者と知り合いっぽいが、医療費と、心肺停止後から1ヶ月後に生存しているかの関係で下のような図が出ている。
これに回帰線を引く意味ってどれくらいあるの?という質問を受けたのだが、図を見るだけではあまり意味がなさそう。
論文中では医療費高い(High)、中(Medium)、低い(Low)にわけて、医療費と生存率には線形性があると仮定してGEE を行っている。線形性を仮定するのは勝手だと思うのでいいけど、この図をみて線形性でゴリ押しするのはなんだかなぁ…と思う(Discussion では線形性なかったね(・ω<) って言っている)。
3クラスターで分けて解析すると、100USD ごとに1ヶ月生存率が1.04倍増えると。また、中vs低、高vs低についてはどちらも生存率OR が1.3倍程度になる。これは年齢で層別化しても、神経学的予後についてもほぼ同じ傾向だった。
神経学的な予後とは、単純に言えば社会復帰と同義。1か月後は生きていました(たいていこれは6%くらいで、論文と一致)、ただし脳虚血時間や蘇生後脳症で寝たきりです、というのはよくある話である。これについては単に生存しているよりかは確率が低いのはなんとなく当たり前の話である。
というわけでサプリデータからデータを取ってくる。PDF とか誰が幸せになるのかまったく分からない。
GEE したらうまく行かなかったのでベタに線形回帰をして線を引いた。
USD と調整後1ヶ月生存率は相関 0.22程度である。は0.05であり、説明しているかというとたったの5%である。これとかこれみたいに線の引き方は考えた方がいいのではないか思ったり思わなかったり。
また、回帰では医療費が上がるほど生存率に寄与すると言っている一方で、中vs低、高vs低 では有意差があるが高vs中はそんなに変わらなそうな気がするし、傾向性があるようなないような。
結論としては低い医療費ではCPA の生存率は低めであり、医療費を高めまくるよりかは中程度に上げれば生存率、ひいては医療の質もあがりそう、だと。
中程度に存在する沖縄や富山などがなぜ突出して生存率が高いのか、緯度や気温では説明がつかないし、ピラミッド型なのはどういうことなんだろうかと。
というのが数字だけいじった印象で、ドメイン知識的には、今回の対象は院外心肺停止、特に心疾患系であり外傷は除かれているので、寿命とかQOL とかそういう観点ではない。また、お金としての変数がおそらく一人あたりの年間医療費なので、CPA になったあとはほぼ確実に集中治療室(ICU) に行くわけだが、ICU での治療行為や医療費に対して解析が行われたわけではない。
あとはまあ1ヶ月というカットオフに対して実はいろいろあれなやつもあるけれども、お金をかけまくれば予後がいいというわけではなく、過ぎたるは及ばざるが如し、なのだろう。
この手の疫学調査は日本人ならいいけど、海外の人には地理的関係がまったくわからないので、原著にもなかったということもあり地図に載せてみた。
東日本は医療費が低くて生存率が低そう。なぜかは知らんが。
dat <- read.csv("life.txt", header=TRUE, stringsAsFactor=T, row.names=1) m <- lm(s_a ~ USD, data=dat) cols <- c(factor(dat$grade))+1 plot(dat$USD, dat$s_a, pch=16, cex=0.5, xlab="USD", ylab="Adjusted 1-month survival") abline(h=mean(dat$s_a), v=mean(dat$USD), lty=3) abline(m, col="pink") text(dat$USD, dat$s_a, rownames(dat), col=cols, pos=1) legend("topright", legend=unique(dat$grade), col=unique(cols), pch=16) library(spsurvey) jpn_GA <- read.shape("JPN_adm/JPN_adm1.shp") # 日本全体の設定 xl <- c(129, 146) yl <- c(30.8, 45) dat <- read.delim("newspaper.txt", row.names=1) # cols <- rainbow(ncol(dat)) idx <- match(jpn_GA[[5]], rownames(dat)) # 都道府県並び替え lmat <- matrix(1, 3, 3) diag(lmat) <- c(2, 1, 1) lmat <- cbind(lmat, lmat+max(lmat)) layout(lmat, widths=rep(c(8, 0.1, 10), 2)) par(mar=c(0,0,0,0)) plot(jpn_GA, xlim=xl, ylim=yl, col=cols[idx]) legend("bottomright", legend=unique(dat$grade), col=unique(cols), pch=16, cex=3) # 沖縄の緯度と経度 xokinawa <- c(127.5, 128.2) yokinawa <- c(26.0, 27) par(mar=c(0, 3, 3, 0)) plot(jpn_GA, xlim=xokinawa, ylim=yokinawa, col=cols[idx]) pa <- par()$usr segprop <- 0.8 segments(pa[1], pa[3], x1=pa[1]+diff(pa[1:2])*segprop) segments(pa[2], pa[4], y1=pa[4]-diff(pa[3:4])*segprop) segments(pa[1]+diff(pa[1:2])*segprop, pa[3], x1=pa[2], y1=pa[4]-diff(pa[3:4])*segprop) mtext("医療費区分", 1, line=3, cex=2) col1 <- cut(dat$s_a[idx], seq(3, 9, by=1), include.lowest=T) col2 <- c("blue", "skyblue", "lightgreen", "yellow", "orange", "red") par(mar=c(0,0,0,0)) plot(jpn_GA, xlim=xl, ylim=yl, col=col2[c(col1)]) legend("bottomright", legend=paste("~", 4:9), col=col2, pch=15, cex=2.5) # 沖縄の緯度と経度 xokinawa <- c(127.5, 128.2) yokinawa <- c(26.0, 27) par(mar=c(0, 3, 3, 0)) plot(jpn_GA, xlim=xokinawa, ylim=yokinawa, col=col2[c(col1)]) pa <- par()$usr segprop <- 0.8 segments(pa[1], pa[3], x1=pa[1]+diff(pa[1:2])*segprop) segments(pa[2], pa[4], y1=pa[4]-diff(pa[3:4])*segprop) segments(pa[1]+diff(pa[1:2])*segprop, pa[3], x1=pa[2], y1=pa[4]-diff(pa[3:4])*segprop) mtext("調整後1ヶ月後生存率", 1, line=3, cex=2)
s_n s_a n_n n_a JPN USD grade Kochi 5.9 6.4 2.5 3 287925 2504 High Tokushima 3.8 3.4 2.2 1.9 264169 2297 High Kagoshima 4.7 4.8 2.3 2.4 264055 2296 High Oita 5.3 5.1 2.2 2 259836 2259 High Nagasaki 4.2 4.1 2.2 2.2 259250 2254 High Kumamoto 5.3 5.3 2.5 2.6 257367 2238 High Hokkaido 6.2 6 3 2.8 253361 2203 High Fukuoka 7.7 7.4 3.8 3.7 252144 2193 High Yamaguchi 4.5 4.4 2.2 2.2 248632 2162 High Wakayama 5.2 5.5 2.5 2.8 247759 2154 High Ehime 4.4 4.7 2 2.2 247342 2151 High Okayama 4.8 5 2.2 2.4 243946 2121 High Kagawa 3.9 4.2 2 2.1 243645 2119 High Ishikawa 6.7 6.3 3.6 3.3 239565 2083 High Hiroshima 5.1 4.8 2.5 2.4 238875 2077 High Tottori 5.3 5.4 2.6 2.6 236214 2054 Medium Shimane 5.8 6.2 3.1 3.5 235968 2052 Medium Miyazaki 4.6 4.7 2.3 2.4 235709 2050 Medium Saga 4.7 4.6 2.8 2.8 233157 2027 Medium Fukui 3.5 3.9 1.7 2 232293 2020 Medium Osaka 7.1 6.6 3.9 3.5 226081 1966 Medium Toyama 8.3 8.4 2.8 2.8 224596 1953 Medium Kyoto 6 5.8 2.8 2.6 223388 1943 Medium Akita 4.2 4.7 2.5 2.8 219345 1907 Medium Aomori 4.2 4.3 1.9 1.9 213084 1853 Medium Yamagata 3.3 3.8 1.7 2 211407 1838 Medium Gumma 4.4 4.5 2.1 2.2 208711 1815 Medium Nara 4 4 2.2 2.1 207181 1802 Medium Okinawa 9.1 8.1 3.4 2.8 206845 1799 Medium Fukushima 3.5 3.5 1.8 1.8 204142 1775 Medium Hyogo 6.2 5.8 2.8 2.6 202829 1764 Medium Iwate 2.9 3.3 1.4 1.6 200099 1740 Low Tochigi 3.4 3.4 1.8 1.8 196225 1706 Low Nagano 3.8 4.2 1.7 2 194999 1696 Low Tokyo 3.2 3.4 1.8 2 194947 1695 Low Mie 4 4.1 1.8 1.8 194425 1691 Low Nigata 4 4.2 2.3 2.5 192820 1677 Low Yamanashi 4.3 4.6 2.1 2.3 191488 1665 Low Miyagi 4.3 4.3 2.2 2.2 191412 1664 Low Gifu 5.1 5.5 2.3 2.4 191359 1664 Low Aichi 6.9 6.8 3.1 3 185712 1615 Low Shizuoka 3.7 3.8 1.9 1.9 185693 1615 Low Shiga 5.8 6.1 2.5 2.6 179995 1565 Low Ibaraki 4.1 4 1.8 1.7 171339 1490 Low Kanagawa 4.8 4.8 2.2 2.2 160195 1393 Low Chiba 4.2 4.1 2 1.9 158745 1380 Low Saitama 5.1 4.6 2.6 2.3 151272 1315 Low