読んだ。
- 作者: 中室牧子,津川友介
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2017/02/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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と著者本人が豪語()しているので読んだが、はっきりいってこれで専門家レベルの知識が得られるとは思えない。というのも、統計学や因果推論ド素人の私でも知っているレベルだし、そもそもこの本は専門書というより一般向けで、いろいろな論文報告を例にして因果推論の考え方と手法をひろく紹介しているだけなので、そこまで期待しないほうがいい。
だたし、書いてある内容は、著者本人は医療政策で博士を取っていて、因果推論自体もRubin から直接学んだ(偉い人に学んだというのはエビデンスレベルが低いんじゃないんですかね)というのを売りにしていて、医学素人からみても医学的な内容については間違ったことは書いていないので、そこの質はよい。
Causal Inference in Statistics, Social, and Biomedical Sciences: An Introduction (English Edition)
- 作者: Guido W. Imbens,Donald B. Rubin
- 出版社/メーカー: Cambridge University Press
- 発売日: 2015/03/24
- メディア: Kindle版
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統計素人的な観点からは
p29-30の図表1-2から1-5
無関係なふたつが偶然にも相関を持つ、の図では、時系列データを扱っているが、時系列データが相関をもつ、というのは解析上、けっこう難しいのでさらっと出しているけど。。。
で、みぎとひだりの2軸に気温と海賊の数を出しているけど、こういう2軸は勘違いのもとなので自分はこのようには出さない。というのも、14度から16度の幅と、0万人から50万人の幅は対応するわけがなく、どちらかの尺度をいじれば、プロットで騙すということが簡単に行えるから。
p126の図表5-4
女性取締役が2人以上いる会社とそうでない会社で業績を棒グラフで出しているが、平成26年度産業経済研究委託事業(企業における女性の活用及び活躍促進の状況に関する調査)報告書 p129の原図そのまま出しているのだろうが、このように原点を0 にしない棒グラフを出されると、棒グラフの長さを認識して4倍の差があると誤認しやすくなる。棒グラフの上に値が書いてあるので良心的だが、実際には11.2 → 14.4 である。
何も考えずに転載したのだとしたら、なんだかなぁ…って思う。
この報告書、女性取締役が1人のときには有意差がなかったが、2人で解析すると有意差があったって、それなんてp-hacking ? って感じだし、人数増やすなら傾向性の検定とか、回帰とかいろいろあったんじゃない?って思った。
p165
データを表現する「最適な線」を引く
体をはった渾身のギャグかな? って思った。
TL が絶賛の内容であふれている(収集バイアス?)なので厳しいことばかり書いてしまったが、初学者が最初によむ因果推論としてはいいと思うし、因果推論に興味がなくても、疫学研究的なエビデンスを知りたい一般人から医療従事者まで誰にでもマッチする内容だと思う。
メタアナリシスがスカスカだったのはアレだし、注文したはいいけどなかなか発売にならずいつの間にか発売になっていたのだが、安いし買いだと思う。