数少ない事象の比較

こんなニュースを見かけた。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171122-00000523-san-hlth
亡くなられた方のご冥福をお祈りします。
統計的に差がなかったから無痛分娩は安全だとか、無痛分娩はしても大丈夫だとか、そういうことをいうつもりはまったくありません。産婦人科的には素人です。
 
どんな解析が行われたのか、詳しい内容はわからないが、このように、何十万件というなかで数件の出来事が生じる場合のモデルは、ポアソン分布が考えられる。
平成22年から6年間(2000-2015年)の分娩数は、estat によるとおよそ630万件である。無痛分娩は分娩の5.5% と見積もったようなので、総死亡277、無痛分娩死亡14 というこれらのデータからポアソン分布のパラメータ\lambda について検定を考える。
 
普通に人数でやると、統計学的には有意にはならない。通常分娩のほうがリスク1.1倍になるという程度である。

N <- c(1087148, 1066129, 1051359, 1043276, 1016709, 1017975)
n <- sum(N)
p_mutsu <- 0.055
n_mutsu <- n*p_mutsu
n_normal <- n*c(1-p_mutsu)

d_all <- 277
d_mutsu <- 14
d_normal <- d_all - d_mutsu
poisson.test(c(d_normal, d_mutsu), c(n_normal, n_mutsu))
	Comparison of Poisson rates

data:  c(d_normal, d_mutsu) time base: c(n_normal, n_mutsu)
count1 = 263, expected count1 = 261.76, p-value = 0.8949
alternative hypothesis: true rate ratio is not equal to 1
95 percent confidence interval:
 0.6400985 2.0275940
sample estimates:
rate ratio 
  1.093348 

 
10万人あたり4.9人というデータから、無痛分娩を受けた人数は14/4.9*100000 で計算できる。これは5.5% が無痛分娩を受けたという数値からは少なくなるので、実際の無痛分娩リスクは高く見積もられ、逆に通常分娩のほうは人数が増えるので、リスクが減る。比をとると無痛分娩リスクが増える。
これでも有意にならない。通常分娩のほうがリスク0.9倍と上に比べて逆転するが、1/0.9 を考えると結局1.1程度なので、効果量的にもあまりかわらない。

n_mutsu <- d_mutsu/4.9 * 100000
d_normal <- d_all - d_mutsu
poisson.test(c(d_normal, d_mutsu), c(n_normal, n_mutsu))
	Comparison of Poisson rates

data:  c(d_normal, d_mutsu) time base: c(n_normal, n_mutsu)
count1 = 263, expected count1 = 264.28, p-value = 0.6661
alternative hypothesis: true rate ratio is not equal to 1
95 percent confidence interval:
 0.5292696 1.6765292
sample estimates:
rate ratio 
 0.9040422