某専門医試験の話

某専門医試験に合格したので公式に専門家を名乗ってよいと思う。
クソ僻地ド田舎弱小医局(医局員ではない)の病院勤務なので、試験についての情報が全然手に入らない。そんななかでも、ネットやSNSで見聞きした情報でなんとかやってきたので、誰かの役に立てばと思い記録する。他、ネットでざっと調べて出てくる体験記も参考にするとよいと思う。
専門医試験合格体験談 - 亀田メディカルセンター|亀田総合病院 麻酔科
麻酔専門医試験合格者が語る!【その1】 | 杏林大学医学部麻酔科学教室
麻酔科専門医試験体験記【第1章】~筆記試験【前編】~ | 麻酔科医師・川根茶農家 やぎしゅん(八木 俊)のブログ
麻酔科専門医試験体験談|さらりーまん麻酔科医の麻酔科専門医試験対策ノート


筆記、口頭、実技の3つの試験を受け、すべてに合格することが合格の条件である。
ただし、以前にいくつかの試験を合格している場合には、その年はその科目を受けなくてよい(留学や休業)ため、3つの科目で受験者数は異なる。
筆記\land口頭\land実技 のところに入った。

  • 筆記試験

筆記試験はひたすら過去問をやっておく。講評を読むと過去問プールがベースのA問題は概ね95%の正答率、新作問題のB問題は50%、症例問題のC問題も50%なことが多い。
しかし第61回から、A+B(っぽい感じでアナウンスされた)とC問題の2つのセクションに分かれ、A+Bはすべて新作で難化するのでは、と噂されていたようだが、蓋を開けてみると80問中50問はA問題、残り30問がB問題で、新作と言えども概ね答えられそうだがやっぱり意味不明な問題もあった。

筆記試験前の注意事項となんなら口頭試問前にもこれを言っていたけど高度なギャグかな?(知らんけど

身近に先輩受験者がいれば直近数年分の過去問はもらえるだろうが、そんなものはいなかったのでヤフオクやメルカリで大量購入した。過去問をさかのぼりすぎて第45回(2006年度)から買ってしまった。バイタルが安定している長時間手術などで解いていた。
意識高すぎるので1年前から入手してコツコツ解いていたが、何周しても周回するころにはAもBもC問題も忘れていることが多いので何回やっても満点なんか無理だった。
メルカリで過去問を買ったらさらりーまん青本(第59回対策用)もついてきた。第59回用は知識集と口頭試問用が一緒になっていて辞書サイズのクッソ使いにくいタイプで、第60回用を持っている人に見せてもらったらB5サイズで分冊になっていたので非常によさそうだった。知識集はハッキリ言って不要だが、口頭試問解答解説集は、周りに試験対策をしてくれる奇特な上司や先輩がいない場合は入手しておいたほうがよいと思う。

過去問プール問題の50問については、過去5年分遡れば同一(もしくは選択肢順序が違うか、計算の値を少しだけ変えている)問題に遭遇するので、5年はやっておく。
C問題も後半の35題は4年分で網羅される。

ちなみに受験票を忘れても係員が最初の注意事項で「忘れたら申し出てくれれば発行できる」と言っていたのでなんとかなる。なんなら筆記用具もなければ申し出てください、と言っていたので忘れてもなんとかなると思う。

  • 口頭試問

昨年、口頭試問用の問題集が出たということで安かったのこともあり買った。心臓、小児など特殊症例用の、とか書いてあったが、スタンダードな症例と思わせておいてトラブルが生じて、最終的に接遇問題に帰着させるパターンの口頭試問向けかというとそうでもないので、口頭試問対策になるかというと微妙である。ただ単なる症例報告のお勉強・読み物としてはレベルは低いがありかと思う。

このあたりは試験直前に新刊として出ているのを知ったが、本屋でさらっと立ち読みする限りでは上記の本とあまりレベル、内容が変わらないようで、駆け込みで買っても読み切れなさそう、と思いスルーしてしまった。

肝心の口頭試問の内容だが、そもそも平日金曜の朝一番(8時〜)のブロックにあてられてしまい、こんなクソイベのために仕事を休まなければならないことにプンスカしていた。朝イチの電車で行けば間に合うのでそうしようと考えていたが、さすがに前泊しろよ、と上司らに言われ、コロナ宿泊補助事業で宿泊40%オフ、かつ神戸市内で使える3000円のクーポンが出るということでホテルに泊まることにした。大浴場に浸かりたいと思って風呂付きのホテルにしたらロウリュ付きのサウナで、真面目にセットをこなしていたらのぼせるかと思った。
前泊するし服装めんどうだと思っていつものジーパンスニーカーで行こうと思っていたが、さすがに面接みたいなものだからスーツを着ていきなさい、とこれまた上司らに言われ、ジャケットスラックスで行ったがこれくらいの小奇麗さでよいと思われる。元試験官をしていた上司によると、サンダルで口頭試問を受けにきた受験者を、落とすべきだ!と意識高い系の先生が会議で言っていたのを、受験要項に書いてないしいいんじゃないの?となだめたことがあるようだが、合否は明らかでない。

肝心の試験内容は、話題になっていたLVAD装着中の開頭血腫除去でも小児でも産科でもなく、肥満高齢女性の大腿骨頚部骨折と、肥満糖尿病のOPCABといういたってシンプルなものだった。問題内容が公開されたら細部を見直すとして、試験の全容と回答内容はこんな感じ。

所定の時間ブロックの集合時間までに会場に行き、座って待っておく。みんなスーツだった。机の上には(アルファベット)-(番号)のネームプレートと下敷きと注意事項と電子機器を入れる大判の茶封筒が置いてあり、定刻になるとなぜか学会のお偉いさんもきて簡単な挨拶と筆記試験にも出ていた学会の理念を言っていきこれまた高度なギャグかな?と思わせる。その後は事務の人が注意事項と受験票を忘れたら言ってくれ、と筆記試験と同じことをいい、下敷きのクリップに受験票を半分に折って(普通にA4に印刷していると想定しているようだ)挟み、紙媒体以外のものはカバンにしまうように言われる。茶封筒にはすべての電子機器の電源を切って、カバンに入れろと言われる。カバンがなければ袋を差し上げます、と言っていたのでなんなら手ぶらできてもどうにかなる。ちなみに紙媒体のものをその後試験までに目を通したり確認したりする時間も余裕もない。
その後、数人ずつに分かれて呼び出され、ホテルの業務用エレベーターに乗って(今回は)9階まで連行される。これをドナドナと揶揄する人もいるとかいないとか。その後、全員(?)が9階に揃うと、9階の業務用出入り口から客室フロアへ行くわけだが、ここで各客室で口頭試問が行われるので、丸々1フロアを抑えなければならないんだな、ということに気づく。そして各部屋前に係員(おそらくバイト)がいて、定刻になると一斉に注意事項の説明と設問の概要が書かれた紙、ボールペンを渡してきて、5分間考える時間をくれる。
まじでこれ。

事前に渡された紙は一旦回収され、入室直前にまた紙だけ渡されるので、「この症例で注意すること/術前検査/使用するモニターを5つ挙げろ」みたいなものを書き出しといたほうがスムーズに声に出せていいのかもしれない。
定刻になったらノックをして一応名乗って入る。客室にベッドがなく机に試験官が二人座っており、片方が出題、片方がPCを操作してTVモニターにバイタルや経過、手技の動画などを流している。荷物は台がありそこに置くように指示される。

1問目
75歳女性、肥満、頸部骨折。術後鎮痛に大腿神経ブロックを行う予定。

(試験前)肥満なので導入の計画、必要物品、DAMアルゴリズムなどが試験のヤマなのでそれを頭の中で整理しておく。神経ブロックの注入箇所や、使用する薬剤など聞かれそうなのでメモしておく。
(試験開始)骨折で入院して当日でない手術なので、普通に導入するようで、酸素化を十分に行う手技について聞かれたので一般的な気道評価、ramp位、十分なマスクフィット、などを答える。FeO2 0.9 くらいになっていれば非常に良好な前酸素化が出来ているのではないでしょうか、と答えてドヤ顔する。
前酸素化で矩形波、EtCO2 40を確認した。このときのFeO2 はいくらと推定されるか、そしてその評価式は? と聞かれ、FeO2 ですか? と2回聞き返してしまうがいずれもそうです、と言われ、(そんなの考えたことないし知らん…)と思い、正直に「考えたことがないのでわかりません」と答えた。ここから心の中の雲行きが怪しくなる。
プロポフォールを投与し、マスク換気を開始したら、V3で全く換気ができなくなりました。対応を述べよ、と言われ、喉頭痙攣が疑われます。応援を呼び、二人法で換気、20cmH2O の圧がかかっているとのことだが30cmH2Oくらいまで加圧してみる、筋弛緩剤を投与します、と答える。
その後、筋弛緩剤を投与され、マックグラスを用いて挿管を試みたようである。すると、声帯が明らかに見えているのに、挿入出来ない。ぶっちゃけ、試験問題用にわざと挿管出来ないようにしているのではないかとさえ思えてくるわざとらしさであった。原因と対応を2つ答えろ、と言われて、(2つ…??)となる。相対的に声帯の開大が小さいので、ワンサイズ小さい挿管チューブを用います、と答えたら、他には?と催促され、まったくわからなくて喉頭展開の具合が甘いのでもっと展開できるように努力します、筋弛緩剤の効きがまだ早いので効くまで待ちます、とか言ってたら(こいつ、トンチンカンなこと言ってるな)って顔されたので、次お願いします、と言って切り上げた。
すると、声帯上嚢胞(?)だったらしく、解剖図と喉頭展開の様子の図が出てきて、嚢胞の場所を支持棒で指せ、と言われ、正直わからないが声帯上、と書いてあったので声帯の近傍の窪みを指した。たぶん間違えた。
その後、挿管は無事終わり、大腿神経ブロックをすることになり、よくあるエコー図が出てきた。大腿神経がどれかなぞれ、と言われ、なぞり、その後、腸骨筋膜はどこかなぞれ、といわれなぞった。さすがにたくさんやってきたので普通に答えられた。
その後、病棟での術後管理に注意することで2つ挙げろと言われ、SAS・肥満があるので無呼吸や無気肺予防にCPAP継続、大腿骨頚部骨折後なので側臥位は難しいだろうから少しでもヘッドアップ。肥満なので疼痛があると酸素需要が増えて(無症候性)心筋虚血のリスクが高いので疼痛管理をしっかりする、と答えた。疼痛管理と言っても大腿神経ブロックしているだろ、と試験が終わったあとで思ったのでアセトアミノフェンなど投与して、と答えるべきだったと反省した。
最後に、術後1ヶ月して嗄声が続くので、麻酔担当医として説明を求められた。「手術お疲れ様でした、1ヶ月前の手術を担当した○○です。確認のためにお名前を言っていただいてよろしいでしょうか(返答はなく試験官がうなずくだけ)。手術前の麻酔説明時にもお話しさせて頂いたと思いますが(実際に試験ではなされていなかったとしても無理やり事実を作りだす)、喉に管をいれさせていただく処置により、どんなに気をつけていたとしても一定の割合で(自分は最大限注意を払ったと主張する)、あなたのように喉がかすれる、というような症状が起きる場合があります。今回、このような事態になり、申し訳ございません(と一応謝る姿勢を見せる)。耳鼻科の先生の協力、診察いただき、声の調子について様子を見させていただければと思います」ここで説明終了、と言って切り上げた。
時間が余っていたようで沈黙の時間が流れたが、ここで「なにかご不明な点、質問はありませんか」と締めるのを忘れていたので、「まだ回答終了になっていないのであれば、(さっきの締めの言葉)を付け加えさせてください」と言って追加した。
すると試験官は満足(?)したようで、「こういう説明を求められたことはありますか?」と聞かれたので、「挿管後に喉頭肉芽腫をきたしたことがあるので、あります」と答えると、「こういうことはめぐりあいたくないですね」と言われ、そこで時間が来たので試験終了した。
失礼します、と言って退室。

2問目(うろ覚え)
試験官は男性二人。試験中はやりづらかったが後から振り返って見ると優しかったと思う。
胸痛でER受診。DMあり
心電図を見せられて、診断は? 急性心筋梗塞。STが上がっているのは分かったが、どの枝か、まではぶっちゃけよくわからないので答えなかった。なぜかみんな沈黙。
その後、ICUに収容し3日後にOPCABをすることになった。検査結果は以下の通りである。周術期管理で注意することを4つ述べよ。
COVID19流行期で呼吸機能検査が出来てない、と書いてあるのでCOVID19のワクチン接種状況、行動歴、PCR検査結果、とCOVID攻めにしたが、3日前からICUに入っていて仮に陽性ならもう詰んでね?と思ったが何も言われなかった。
他、日常生活の運動耐用能を聞いて3つ…と思ってたら「糖尿病についてはどうですか?」と助け舟を出され、罹病期間について聞くと「コントロールについては…」と聞かれたので低血糖発作や、DKAなど高血糖での入院歴など、と答えた。
その後、手術をしたが、必要なモニターを答えよ、と言われ、Aライン、SGなど答えたが、TEEを答え忘れた。
このあたりで「時間が迫っているのでテンポよくお願いします」と言われ、回答が早口になり始める。
その後、吻合時に血圧が低下してきています。原因と対応を4つ(?)答えてくださいと言われ、外科医に報告、脱転の調整、輸液・ボリューム管理、血管収縮薬、と答えるが4つに足りてない(?)らしく、他には?と聞かれる。
その後、検査値などが出てくるがあんまり異常値がなくて「血管作動薬…??輸液・輸血…??」って答えると「輸液以外にないですかね」と聞かれ、しどろもどろになり次に行ってください、と答える。
接遇問題。手術が終了し、高価なセラミックが欠けたことに対して患者に説明を求められた、ということで対応する。一緒に麻酔をした専攻医2年目がマックグラスで破損させた、という設定(マックグラスなのに破損さすなよ
「手術大変でしたね、お疲れ様でした。麻酔を担当していた○○です。間違いのないように確認のためお名前よろしでしょうか(無視)。手術前に説明されたと思いますが(前の設問と同じ)、手術に必要な、口の中に管をいれさせていただく処置で、あなたの大切なセラミックの歯が欠けてしまいました(と共感的態度)。どんなに気をつけていたとしても一定の確率で生じてしまうこと(と言って責任逃れ)で、大変申し訳ございません。もう少し体調が落ち着き次第、歯科医師が居りますので(いなかったとしても無理やり存在を作る)歯科医に協力してもらって処置、治療出来ればと思います。なにかご不明な点、質問はありませんでしょうか(と前の問題で聞き忘れていたことを聞く)」
試験官「この治療費は負担してもらえるのでしょうか」「上のものに報告し、協議の上、対応については後日ご連絡出来ればと思います(と結論は現時点で出さない。上の立場の人間に責任を押し付ける)」
で終了。なんだかんだで1分くらい余って3人とも無言タイム。
時間が来たので挨拶して退室。
その後、その時間に試験を受けていた全員がいっぺんに客室エレベーターを使って1階まで降りて、試験終了となった。

うまくいったかよくわからなくもやもやした気分のまま、旅割クーポン3000円分をいい感じに使える神戸牛ステーキ屋にはいりランチを食べて帰路についた。

発表は翌週木曜日の12時に学会から定期メールが来て、会員専用ページに合格発表を載せた、とあったので12時5分くらいにアクセスすると、重くて15分くらい表示されなかった。
合否結果は冒頭の図、口頭試問の実地試験は5人、実技試験の実地試験は2人、名前が挙がっていた。
3科目とも、合格者の受験番号しか載っていないので、厳密に3科目すべて合格したかは細かにチェックしないとわからない。

library(drc)
dat <- read.csv(text=
"no,history,category
1,57,B
2,59,B
3,59,A
4,57,B
5,58,B
6,58,B
7,58,A
8,59,B
9,59,B
10,59,B
11,59,B
12,56,A
13,57,B
14,57,B
15,58,B
16,58,B
17,58,B
18,57,A
19,58,A
20,59,B
21,56,B
22,59,A
23,59,B
24,59,A
25,57,B
26,57,B
27,59,B
28,59,B
29,59,B
30,59,A
31,59,A
32,60,B
33,59,A
34,59,A
35,60,B
36,60,B
37,59,A
38,56,A
39,56,A
40,56,A
41,58,A
42,60,A
43,58,A
44,59,B
45,59,B
46,59,B
47,59,B
48,57,B
49,57,A
50,60,A
21,57,C
22,57,C
23,57,C
24,57,C
25,57,C
26,57,C
27,57,C
28,58,C
29,58,C
30,58,C
31,58,C
32,58,C
33,58,C
34,58,C
35,58,C
36,58,C
37,58,C
38,59,C
39,59,C
40,59,C
41,59,C
42,59,C
43,59,C
44,59,C
45,59,C
46,59,C
47,60,C
48,60,C
49,60,C
50,60,C
51,60,C
52,60,C
53,60,C
54,60,C
55,60,C")

y <- rev(table(subset(dat, category!="C")$history))
y <- cumsum(y)/sum(y)
b <- seq(y)
m <- drm(y ~ b, fct=LL.4(fixed=c(NA, 0, 1, NA)))
x <- seq(0, length(b)+1, length=1000)
Y <- predict(m, as.data.frame(x))


par(mar=c(4.5, 5, 2, 2), cex.lab=1.5, cex.axis=1.3)
plot(x, Y, log="", xlab="遡る過去問年数", ylab="過去問一致割合", las=1, type="l",lty=1, lwd=5, ylim=c(0, 1.02))
points(b, y, pch=15, cex=2, col=1)